農薬がパーキンソン病の原因となるメカニズム-米・ミズーリ医科大学

パーキンソン病は、中脳黒質ドーパミン作動性神経の変性によって生じる神経変性疾患であり、手足のふるえなどの運動症状やうつなどの非運動症状を伴う。映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などで有名なマイケル・J・フォックス氏が30歳の若さで発症したことでも知られている病気である。

その原因の5%以下は遺伝性であるが、残りの95%は環境に起因すると言われており、農薬のロテノンパラコートがその環境要因のひとつではないかと疑われてきた。最近では、今年2月に米NIHの付属機関である環境健康科学研究所が、どちらかの農薬を恒常的に使用している農民は、そうでない農民より2.5倍パーキンソン病にかかりやすいという疫学調査の結果を報告している(購読無料)。

これまでロテノンは、ミトコンドリア呼吸鎖複合体Iを阻害することにより、またパラコートは、NADPHから電子を奪うことにより、活性酸素種を生成し、それが酸素消費の多い神経細胞を変性させるのではないかと考えられてきた。しかし、生成した活性酸素種がどうやって細胞を死に至らしめるのか、その詳細なメカニズムは不明だった。

米・ミズーリ医科大学の病理・解剖学者であるZezong Gu氏率いる研究チームは、『Molecular Neurodegeneration』6月号に発表した論文(購読無料)の中で、活性酸素がパーキンと呼ばれるユビキチン転移酵素タンパク質のシステイン残基を酸化することでその活性を喪失させることを明らかにした。ユビキチン転移酵素は、細胞内で不要となったタンパク質に目印をつけ(ユビキチン化し)、それを分解、廃棄するシステムを担う重要な役割をもつ。その重要な酵素の機能が失われたことにより、本来廃棄されるべきタンパク質が細胞内にとどまり、凝集することで細胞を死に至らしめていたのだ。

さらに、パーキンはその名前から推測されるように、パーキンソン病の原因遺伝子として1998年に単離されたのだが、Gu氏らは、活性酸素により酸化されたパーキンタンパク質のシステイン残基の位置と、遺伝性のパーキンソン病患者でパーキン遺伝子が変異している位置が一致することを明らかにした。遺伝子とタンパク質の対応する位置が、遺伝要因としても、環境要因としても、パーキンソン病の標的とされていたことから、パーキンソン病の環境要因説、そしてその要因が農薬にあることの信憑性が一層高まったと言えよう。

(神無 久:サイエンスあれこれ

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