シリコンウェハー上に「脳」をつくる-米・ピッツバーグ大学

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微小区画化されたシリコンウェハー上に細胞を培養する、いわゆる「細胞チップ」は、薬剤候補化合物の大規模スクリーニングを可能にする技術として、近年めざましく発展している。今回、米・ピッツバーグ大学の生物工学者Henry Zeringue氏率いる研究チームは、リング状に削り出したシリコンウェハー上に、ラットの海馬から取り出した神経細胞を培養した神経細胞チップ(写真)で、短期記憶のメカニズムと考えられている電位持続活性(persistent activity)を観察できたと『Lab Chip』5月号にて報告した。シリコンの上の「脳」も夢じゃないかもしれない。

Zeringue氏らは、光リソグラフィーにより、直径500μmほどのリング状に削り出されたシリコン基板上に、細胞接着を促すリジンアミノ酸ポリマーを塗布し、その上に平均40-60個ほどのラット海馬神経細胞を培養することによって神経細胞チップを構築した。チップ上の神経細胞は、培養開始後10-14日ほどで、神経ネットワークを形成する。リングの外径は、ネットワークの大きさを、リングの太さでネットワークの複雑さを制御できる。外部電極からの電気刺激により神経が発火する様子は、発火により細胞内に流入するカルシウムと反応する蛍光性指示薬からの蛍光を、高速度CCDカメラにより検出する。

この「脳」チップにより観察される神経発火の特徴は、通常生体内では0.25秒ほどで終わってしまう活動電位の上昇が12秒間も持続する点にある。これにより、神経ネットワークを駆け抜ける神経発火の様子をスローモーションで観察することができるのである。また、この「脳」チップでは、あらかじめ与えた電気刺激の後では、神経の反応性が6倍ほど高まる電位持続活性も観察できたという。脳の複雑な機能を理解するためには、スピードは遅いが、最低限の記憶システムをもつ、この少しトロい「脳」チップが、逆に役に立つのかもしれない。

(神無 久)

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