「ニート」を増やすメリット

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かつてニート(NEET; Not in Education, Employment or Training)という言葉が流行りましたが、みなさんは覚えていますか?教育、労働、職業訓練のいずれにも参加していない状態の若者が増えて問題になりましたね。今回ご紹介する「ニート」は、これとは異なり、密かに私たちの健康のカギを握る、増えると嬉しいニートなのです。

太る原因は食べ過ぎ?運動不足?

 コンビニやスーパーが身近にある生活を送る私たちにとって、食べ物に困ることはほとんどありません。「飽食の時代」といわれ久しいですが、同時に肥満や生活習慣病を患う人も急増しています。これらの疾患が増えた原因は、一見、食べ過ぎにあるように考えがちですが、実は一概にそうともいえない報告がなされました。
 国民健康・栄養調査結果によると、2003年の日本人1日当たりの摂取カロリーは1920キロカロリーであり、これは戦後1946年の1903キロカロリーとほとんど変わらないのです。これ、とても意外な気がしませんか?食の欧米化も進み問題視されていますが、カロリーの面でいえば、私たちは食べ過ぎている訳ではないのですね。
 では、太ってしまう原因は一体何でしょう。それは、食べ物とエネルギーの関係から明らかにできます。先ほどから使っているカロリーという言葉は、エネルギーの量を表しています。たとえば三大栄養素であるタンパク質、脂質、炭水化物をそれぞれ1g摂取することで、人間は約5.65、9.45、4.1キロカロリーのエネルギーを得られます。得られたエネルギーは、身体を動かしたり温めたりするために消費されますが、消費できなかった分は体内に残ったままになってしまうのです。これが、太る原因となります。つまり、カロリーをうまく減らせないから太ってしまうのですね。このことから、現代を生きる私たちには、身体を動かしカロリーを消費する機会が減っていると考えられます。

図1
図1.体内のカロリーの使われ方

カロリー消費のカギを握る「ニート」

 定期的に長時間運動する習慣がある人は、うまくカロリーを減らすことができ、結果太りにくいといえるでしょう。では、特別な運動をしない人はみな太ってしまうのでしょうか。
 そんな疑問に答えてくれる研究結果があります。2005年にアメリカで行われた肥満研究結果によると、肥満者は非肥満者と比べ、1日の生活のなかで座っている時間が164分も長く、立って活動している時間が152分短かったとのことです。この差を消費カロリーに換算すると352キロカロリーとなり、これはご飯お茶碗1.5杯分のエネルギーに相当するそうです。こうして具体的な数字を示されると、びっくりしてしまいますね。特別な運動をしているわけではないのに、こんなに大きな差が生じるのです。
 これだけの差が生じる原因が、「ニート」です。これは、NEAT(Non-Exercise Activity Thermogenesis)のことで、「意図的に行われるスポーツや運動以外のすべての身体活動によるエネルギー消費量」と定義されます。意図的とは、休み時間のレクレーションや体育の授業、部活や習い事などを意味します。逆に、意図的ではないとは通学、通勤のための歩行や、目的もなくうろうろと動きまわることなど、運動すること自体を目的としないあらゆる活動が含まれます。
 先ほどの肥満者と非肥満者の違いは、どうやらこのNEATが多いか少ないかの違いと言い換えることができそうです。つまり、仕事やプライベートで、座っていること(事務仕事、読書など)が多いか、外や屋内で動きまわっていること(営業、ショッピングなど)が多いかの違いです。日常生活で特別な運動をしていない間でも、NEATを生み出すことができれば太りにくくなるのです。

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図2.NEATの貢献度の違い

余ったカロリーはニートでなくそう

 どうせなら、NEATをうまく増やして、できるだけ太らずにいたいですよね。では、どのぐらいNEATを増やせばよいのでしょうか?1日分の食事をして余ったカロリーを歩いてなくすそうとすると、歩数にして、約10,000歩必要だといわれています。たとえば、上りのエスカレーターの前に長蛇の列ができていれば、その列を尻目に颯爽と階段を駆け上る、とにかく屋外に出てみるなど、この数字をクリアするためには日常生活で無理に運動しなくとも、「ちょっとした工夫を加えること」が、NEATを増やし、太りにくくなるチャンスとなるのです。

 NEATを増やせそうな工夫を思いついたら、ぜひとも試してみませんか?きっと楽しく健康的な体を保てますよ。

【文・埜本 慶太郎(リバネス記者クラブ)】

<参考文献>
1) 国民健康・栄養調査

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html

2) 中村 隆一,斎藤 宏,長崎 浩 著.基礎運動学 第6版(2007)
3) James A. Levine, et al. Interindividual Variation in Posture Allocation: Possible Role in Human Obesity. Science 307, 584 (2005)
4) 藤沼 宏彰.糖尿病の療養指導Q&A NEAT. PRACTICE プラクティス26, 6(2009)


本記事は、株式会社リバネスが配信するメールマガジン「リバコミ!」のサイエンストピックスを転載したものです。

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