ニューロマーケティングの精度-米・エモリー大学

ニューロマーケティングとは、消費者行動の予測を、従来のアンケートなどによる方法ではなく、直接脳の活動を測定することで行おうというマーケティング手法だ。実際、アンケートは様々な要因の影響を受け、真の購買行動を予測できないことが知られている。例えば、2010年に行われた米・エモリー大学の神経経済学者Gregory Berns氏らによる研究(購読無料)では、ティーンネイジャーに聴かせた音楽の好みは、その音楽の人気度に左右されることがわかっている。みんなが好きな曲が、私の好きな曲というわけだ。少なくともアンケート上は。

この実験の中で、被験者はまだ無名の120曲を聴かされ、それに対する好みを聞かれるのだが、その曲の人気度の情報を与えられないときに、答えた好みと連動して活動する脳の領域が、それを与えられると連動しなくなることがわかったのだ。頭ではあまり好きじゃないと思っている曲でも、人気のある曲だと好きな曲だと答えてしまうのだ。ただ、この話には面白い続きがあった。結局最終的に判断された、人気度に左右された曲の好みと、人気度に左右されず活動する脳の領域、どちらが実際の購買行動と相関しているのか?その答えがわかったのは2年後のことだった。

それは、Berns氏が自宅で子供たちと一緒にアメリカン・アイドルというTV番組を見ているときのことだった。番組内で歌われた曲が2年前、氏らが実験に使った、当時まだ無名だった曲だったのだ。2年間の間に、超人気番組で歌われるほど有名な曲になったことを知った氏は、当時使った無名の120曲すべての、セールス記録を問い合わせたところ、87曲が実際に売れた曲としてそのセールス記録を得ることができた。

このセールス記録と相関した、すなわち真の購買行動に相関した脳の領域を、当時取った脳活動記録と照合した結果、眼窩前頭皮質と側坐核(腹側線条体)という部位での活動が相関していることがわかった。ただし、この相関は統計的には有意なものの、それほど強いわけでもなかった。セールス記録の違いのおよそ10%程度を説明できるに過ぎなかったのだ。しかしながら、実際に被験者たちが答えた曲の好みとセールス記録は、全く相関していなかった。

このことから、Berns氏らは、ニューロマーケティングの手法は、時としてアンケート調査よりは正確に、消費者行動を予測できるのではと結論付けている。10回中1回当たる精度のニューロマーケティング会社に、お金を払おうと思うかどうかは定かではないが、今後個人に関する膨大な生物学的情報が蓄積されるにつれて、ニューロにとどまらず、バイオロジカル・マーケティングという時代がやって来るのかもしれない。この研究成果は、『Journal of Consumer Psychology』の6月8日付オンライン版に掲載された

(神無 久:サイエンスあれこれ

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