福島第1原発事故、植物による土壌浄化に関する国内専門家の見解

福島第一原子力発電所の放射性物質が、広範囲に飛散した。この影響で出荷制限や停止などの措置がとられている。今後、農地の利用再開を考えるときに、「植物による土壌浄化(ファイトレメディエーション)」も考える必要がある。

この土壌浄化に関して、植物に有害元素を吸収させて汚染土壌などを浄化する手法を研究している、北海道大学大学院農学研究院 生物資源生産学部門作物生産生物分野 植物栄養学研究室の渡部敏裕助教の解説をお届けする。

渡部氏は植物を使って放射性物質を吸収・除去させる手法について、その実現性や実現可能性のある植物について以下のように語る。

「最も可能性が有るのは、地上部(茎と葉)に放射性元素を集積させ、それを刈り取り処分することです。ファイトレメディエーションに適した植物を選定するにはいくつもの課題があります。
・対象となる放射性元素(今現在ではセシウム(Cs)137がそれに該当するかと思います)をたくさん地上部に集積する
・バイオマス(成長量)が大きくて成育が早い
・環境に対して悪影響を与えない(外来種や繁殖力の強い多年草などは好ましくない)
・栽培が容易(繁殖が難しい種、生育環境が限られる種は適しません)
ファイトレメディエーションは根が届く範囲でしか効果がない(Csは土壌への吸着力が強いため、飛来したCs137のほとんどは土壌の表層にとどまると思います。そういう場合は根を深く張る植物種では吸収・除去効果が低くなってしまいます)
 ネットでも公開していますが(http://www.geocities.jp/watanabe1209/Topics/CsSr.htm)、私と北大植物園の共同研究で、植物界全体をある程度網羅した植物種の元素分析をしています。その結果からCsやストロンチウム(Sr)の高集積植物が見つかっています(ここでいうCsやSrは、自然に存在する非放射性元素のことです。植物は、放射性元素のCsやSrも同じように吸収・集積する性質があります)。
 これらの多くは上記の3や4で問題があるのですが、近縁種などからいくつか候補を絞り、現在圃場試験を準備しています。
 本当は現地土壌で栽培試験をすべきなのですが、発生源(原発)がまだ封じ込められていない現状ですと植物体に集積した放射性元素が根吸収由来なのか大気中の塵由来なのか分からなくなってしまうため評価が難しいと思います。その代わりに、非汚染土壌での圃場試験で根の張り方なども調べながらファイトレメディエーション用植物の選定を行います。ただ事態は急を要していますので、厳密な評価なしにでも今ある情報や施設を使ってできるところから実施できればよいのですが。」

ただし、植物による土壌浄化を実施する上で注意しなければいけない点について氏はこう言う。

「実現のための大きなハードルは刈り取った後の植物の処理です。その処理方法により利用できる植物種も少し変わるかもしれません。焼却して灰などに含まれる放射性元素を回収するという方法なら、上記の1~5の総合評価が高いものを選べばよいでしょう。一方、もしバイオガスなどにすることを考えるのなら、エネルギー作物で考える必要があるかもしれません。いずれにせよ、広範囲で実施するのであれば処理施設に目処がたってから栽培を行わないと莫大な廃棄物が出てしまいます。」 

渡部氏の提言は以前紹介した筑波大学元教授・植物遺伝育種学、生井兵治氏の緊急提言と内容的には一致する部分も多い。

こうした対策が人の手によって行われないような生態系において、放射性元素は循環し、一部は系外に出ていくことになる。放射性物質との戦いは始まったばかりだ。

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