ちっちゃいけれど力持ち!リチウムイオン電池


携帯電話、携帯音楽プレーヤー、ノートパソコンなどなど、私たちの身の回りには「バッテリー」を使っている電化製品がたくさんあります。これら製品のバッテリーとして多く目にするのは「リチウムイオン電池」。この登場により、さまざまな製品の小型化が進みました。リチウムイオン電池は、どんなしくみで電気を流しているのでしょうか?

安全に使えます

電池は、さまざまな物質を組み合わせることで、物質同士の酸化還元反応による電子の移動を電流として取り出すためにつくられました。そのなかで、マンガン電池、アルカリ電池のような使い捨てのものや、ニカド電池、リチウムイオン電池のような、充電することでくり返し使えるものがあります。充電池には、充電をすることで、電池内の物質を使用前の状態に戻すことができるような組み合わせの物質が使われています。
リチウムイオン電池は、小さくても強い電気を得られる充電池として開発されました。他の充電池であるニカド電池やニッケル水素電池が1.3V、鉛蓄電池が2Vの電圧を出すことができるのに対し、リチウムイオン電池は4Vと飛びぬけて大きい電圧を出すことができるのです。
リチウムイオン電池には、リチウムイオンを含む化合物が、正極と負極、そして正極・負極をつなぐ電解液に使われています。じつは、電池から強い電気を取り出しやすくするには、負極にリチウムイオンではなく、「金属リチウム」を使う方が適しています。なぜかというと、リチウムは最も軽く、電子を放出しやすい金属なので、電池の重さに対する電力量である「エネルギー密度」を高くすることが可能だからです。しかし、金属リチウムを用いた場合、充電をくり返すことで負極表面に樹状結晶ができてしまい、結晶が正極に達するところまで成長すると、電池内でショートしてしまうという危険性があります。そこで、くり返し充電による危険性がなく、より安全に用いることができるものとして、リチウムイオンが使われるようになったのです。

リチウムイオンが行ったり来たり

リチウムイオン電池の負極には、主に黒鉛にリチウムを吸蔵したLiC6が用いられています。黒鉛は炭素原子が六角形に結合したものが層状に重なっていて、層の間にリチウム原子が入り込むことができる性質を持ちます。また、正極はコバルト酸リチウムLiCoO2が用いられます。コバルト酸リチウムは、CoO2の層の間にリチウムが入り込んだ構造をしています。負極のLiC6では、層をつくっている炭素同士の結合力に比べると、層に入り込んだリチウムと炭素の結合力はとても弱くなっています。これは、正極のLiCoO2でも同様です。CoO2同士の結合力に比べて、リチウムとCoO2の結合力はとても弱くなっています。このように結合力の差があると、電気を流したときに先にリチウムが反応するため、分離、結合しやすいという性質を持ちます。
リチウムイオン電池から電流を流すときは、負極の黒鉛に入っていたリチウム原子から電子が放出され、リチウムイオンになって正極のCoO2の層に移っていき、リチウムイオンが電子を受け取ってリチウムに戻ります。逆に、充電するときには、CoO2の層からリチウムイオンが引き抜かれ、黒鉛の層に移っていきます。リチウムイオンが正極と負極を行ったり来たりすることで、何度も使える充電池として働くのです。この化学反応式は、
図1
となり、放電時には右向きの、充電時には左向きの反応が起こります。

図2
LiC6の構造 LiCoO2の構造

いろんなモノにお供します

リチウムイオン電池は、小型でも強い電力を発することができるため、バッテリーの大きさに影響される携帯電話などの小型化に貢献してきました。また、小型化だけではなく、リチウムイオン電池のエネルギー量の大きさに注目して、一度の充電で長時間の走行が求められる電気自動車などにも用いられています。しかし、現状では、電気自動車をガソリン自動車ほど長距離走らせるだけの電力を蓄えることができないこと、正極に使われているコバルトは希少で高価な金属であることから、今後、リチウムイオン電池の使用量が増加するとコバルトの資源枯渇が起こる危険性がある、などの問題があります。そこで、現在も蓄えられる電力を大きくする研究や、コバルトの代わりとなる材料の研究が行われています。
私たちの生活から切り離せなくなった、縁の下の力持ちのリチウムイオン電池はまだまだ進化を続けています。小さいものから大きなものまで、さまざまなものの中でひっそり頑張っていくリチウムイオン電池。今後の活躍に期待です!
【文・大久保 貴之(リバネス記者クラブ)】

<参考文献>
1) 工藤徹一,日比野光宏,本間格著.リチウムイオン電池の科学.内田老鶴圃(2010)
2) 山崎和也,岡部俊夫著.コバルト酸リチウム(LiCoO2)の構造研究.富山大学水素同位体科学研究センター研究報告(2001)
3) 福田憲二,梅野達夫,原陽一郎著.リチウムイオン二次電池負極材としての天然黒鉛/炭素複合材料.マテリアルインテグレーション,Vol.17 No.1(2004)
4) 石井壮一郎,片山恵一著.リチウムイオン二次電池用電極材料.東海大学紀要工学部(2000)


本記事は、株式会社リバネスが配信するメールマガジン「リバコミ!」のサイエンストピックスを転載したものです。

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