植物からヒトのからだまで、働きもののカロテノイド

完熟トマトの赤色や、ニンジンのだいだい色。これらの正体は、「カロテノイド」と呼ばれる化合物です。トマトのリコペンや、ニンジンに含まれるβ-カロテンがよく知られていますね。これら「カロテノイド」は、植物だけでなく、動物、私たちヒトの体内でもさまざまな働きをしているのです。

カロテノイドを生み出す植物たち

カロテノイドは、光合成生物によって毎年1億tが供給されると推定されています。光合成を行う生物には、植物や海藻のほか、クロレラのような微生物も該当します。おや、カロテノイドは黄~赤色なのに、彼らは緑色をしているじゃないかって?じつは、一見緑色に見える植物の葉にもカロテノイドは含まれています。植物の葉が緑色に見えるのは「クロロフィル」という緑色の色素のためです。葉から色素を抽出し、それぞれの成分を分離すると、赤やだいだい色のカロテノイドの色が分かれて見えてきます。
カロテノイドは、植物の葉中では、光合成のために光を受け止める働きをしています。光合成は、光という物理的なエネルギーを、電気化学エネルギーを経て化学エネルギーへと変換していきます。これらに最も重要な機能はクロロフィルが持っています。しかしながら、カロテノイドも光を集めてクロロフィルにエネルギーを渡す働きをもっています。また、植物は、強すぎる光を受けるとエネルギーの受け渡しが上手くいかず、さまざまな障害が発生します。それを防ぐために、光によって励起されたエネルギーを消去して葉を守るための働きをするカロテノイドがあることも知られています。

食べられたカロテノイドのゆくえ

一方、動物は自身でカロテノイドをつくり出すことができないため、食物から摂取することで利用、蓄積しています。エビやカニの甲羅の色、卵の黄身や、ホタテの卵巣、サケの身のピンク色が代表的です。また、ヒトの体内でもカロテノイドは使われています。体内の活性酸素種を消し、防御機構として働く「抗酸化活性」があることは有名ですね。たとえば、β-カロテンを代表とした一部のカロテノイドは、ビタミンAに変換されて使われます。
また、葉野菜に含まれるルテインは、目に蓄積されることが知られます。これが蓄積されている人は、加齢とともに、目の網膜内が変性してしまう病気になりにくい傾向にあることが知られていいます。

カロテノイドを食べたら気になるお腹が……?

カロテノイドの生理活性のなかでも、近年報告されたものに、ワカメなどの海藻類に含まれているカロテノイドの「フコキサンチン」による「動物生体内における抗肥満効果」があります。マウスを使った実験で、フコキサンチンを摂取させたグループは、摂取させなかったグループと比較して肥満が抑制されたというのです。フコキサンチン摂取グループのマウスの体内の脂肪組織内で熱産生タンパクが見つかったことから、蓄積されているエネルギーを熱にして放出させていると考えられています。また、このカロテノイドは、天然物化合物のなかでも稀な構造をしており、がん細胞のアポトーシスを誘導するなど、めずらしいカロテノイドとして注目されています。

まだまだ謎多きカロテノイドたち

カロテノイドは、天然のものだけで700種類以上存在します。植物内、動物体内など場所によって、また、動物体内でも臓器の違いによって、吸収や蓄積、生理活性に違いがあります。このように多岐にわたって姿や機能を変えるカロテノイドは、現在も世界中で研究が行われています。そのような研究の成果として、驚くような効果が明らかになる日がくるかもしれませんね。

【文・加茂川 寛之(リバネス記者クラブ)】

<参考文献>
1) 三室 守ら.カロテノイド-その多様性と生理活性-.裳華房(2006)
2) Hosokawa, M et al. Fucoxanthin induces apoptosis and enhances the antiproliferative effect of the PPARgamma ligand, troglitazone, on colon cancer cells. Biochim. Biophys. Acta (2004)
3) Maeda, H et al. Fucoxanthin from edible seaweed, Undaria pinnatifida, shows antiobesity effect through UCP1 expression in white adipose tisues. Biochem. Biophys. Res. Commun (2005)


本記事は、株式会社リバネスが配信するメールマガジン「リバコミ!」のサイエンストピックスを転載したものです。

 

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