タコは手足を見るか?-イスラエル・ヘブライ大学

 

NOAA Ocean Explorer: NOAA Ship Okeanos Explorer: INDEX 2010 “Indonesia-USA Deep-Sea Exploration of the Sangihe Talaud Region”
 

ちょっと想像してみよう。自分の手足がタコのように、例えば右手、右足、左手、左足、全部2本ずつあったとしたら。いや、もうこの際、手足の区別も、左右の区別もなくして、8本を自由に使えるとしたら。エアコンのリモコンでスイッチを入れ、テレビのリモコンでチャンネルを変え、パソコンのキーボードを叩きながら、一杯のコーヒーをすすり、トーストにかじりつく、なんてことも可能かもしれない。

でも本当にそれほど簡単なことなのだろうか。なぜなら、タコもそうであるように、人間にも目は2つしかないからだ。それぞれの手の動きを認識しつつ、別々の動きをさせるのは、やはり2つまでが限度ではないだろうか。このようなことから、タコは8本の手足の動きを、視覚によってコントロールしてはいないだろうと、これまでは考えられていた。

イスラエル・ヘブライ大学の研究者らは、これを確かめるべく、ある実験を考案した。プールに沈められた、透明なアクリル樹脂の一種(Plexiglas)でできた迷路は、円筒形の筒とその上に三叉に分かれた通路からできていた。

通路の奥にはエサが置かれ、その位置には下からよく見えるように黒い目印がつけられた。迷路の中にエサがあることを教え込まれたタコは、円筒形の筒から8本のうち1本の手足を入れる。

筒の先は水の上に出ており、入れられた手足はエサから発する匂いを頼りにできないように一度水の外に出されることになる。その後、3分以内に3つの通路のうちいずれかを選んで、手足を伸ばす。その選択が正しければ、最終的に通路の奥に置かれたエサにありつけるという仕組みだ。もちろん、通路は水に満たされているので、再び匂いを頼りにできないよう手足の「二度づけは厳禁」である。タコはエサのある通路の先端に見える黒い目印だけを頼りに、3分間一本勝負でエサにたどり着く必要があるというわけだ。

実験に供された7匹のタコのうち、6匹がエサにありつくことができ、そのうち5匹のタコは実験の回を重ねるごとに、その成功率が向上した。なかには、60-200回の実験の最初と最後で成功率が3倍近く向上したタコもいた。対照実験として、不透明なテープで通路を覆い、下からエサの目印が見えないようにすると、どのタコの成功率も、実験の最初の頃と変らない値となった。これらの結果から、タコも視覚を頼りにその手足の動きをコントロールできることが示唆されたと、研究者らは述べている。この成果は、『Current Biology』3月22日号に掲載された

ただ、今回の結果は、タコが「日常的に」視覚を使って、手足をコントロールしているのかどうかに関しては何も語っていない。必要に迫られれば使うことができるのと、普段から使っているのとは意味合いが違うだろうし、前者の場合、8本とも視覚でコントロールできる可能性は、後者の場合より低いだろうと思われる。今後の展開が楽しみである。

(神無 久:サイエンスあれこれ

Creative Commons License photo credit: NOAA, Ocean Explorer
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