マラリアと戦う人工生物


アメリカとイギリスのチームが蚊のマラリア原虫を殺す菌を開発した。

マラリアはマラリア原虫によって引き起こされるが、マラリアの主な原因は原虫を媒介する蚊だ。その事からマラリア対策は大抵、蚊の対策となる。いままで蚊に対する対策としてよくあったのは殺虫剤を散布する事だが、この方法だと耐性をもった蚊が出てくるのが問題だった。

Metarhizium anisopliae(M. anisopliae)と呼ばれる真菌はこの問題に対する解決策と考えられている。この真菌の特徴は蚊に感染してもすぐに蚊を殺さない事にあり、実はそれが蚊が耐性を獲得しにくくさせている。

感染した蚊はすぐに死なないため、広範囲を移動して個体数を増やすが、それと同時に真菌も多くの蚊に感染していく。さらに、耐性を獲得する前に殺すので、この真菌は絶妙なタイミングで蚊を大量に殺していく事ができるのだ。

しかしMaryland大学の昆虫学者Raymond St. Leger氏と彼のチームは、単に蚊を殺す事を望んでいない。彼のチームは真菌に遺伝子を組み込む事で、蚊を殺さずに蚊の体内でマラリア原虫と戦うM. anisopliaeを開発した。遺伝子組み換え処理されたM. anisopliaeは原虫に効果的な抗体からサソリの毒素を生産するものまで様々なものが作られたが、どの型のM. anisopliaeも蚊には無害であるように注意を払われた。

この真菌の効果を実験で確かめた所、蚊の体内のマラリア原虫は最大で98%減少し、高い効果を示した。
一方で慎重な意見もある。「実際のところ、どれくらいの原虫が病気を引き起こすのかは誰も知りません。」と計画に協力したアメリカの研究機関NIAIDのAdriana Costero-Saint Denis氏は言う。「この発見はとても刺激的なものではありますが、実際に使用されるにはまだまだ厳しいテストが必要です。」

安全性が実証されれば、アフリカやアジアでのマラリア蔓延に対する強力な兵器になるのはまちがいなさそうだ。

(櫻井博光)

■関連リンク
National Institute of Allergy and Infectious Diseases Home Page
Lab-engineered Organism Fights Malaria – Science News
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