人間を味方につける-カナダ・カルガリー大

 

Teddy Bear To Cuddle
Creative Commons License photo credit: Yellow Snow Photography 

人間はとっくの昔に忘れてしまったかもしれないが、野生動物の世界は、常に食うか食われるかのせめぎ合いだ。食う側は追い、食われる側は逃げ、互いのオーバーラップする生息領域は、広がったり、狭まったりしながらも微妙な平衡を保っている。食うに困らない楽園なのか、食われる心配のない安息の地なのかの違いはあるにせよ、新天地の奪い合いにも似たこの争いには、神を味方につけた側が有利なようだ。そう食物連鎖の最上位に君臨する人間様を。

カナダ・カルガリー大学の研究チームは、2008年の4月から11月の8ヶ月間、アルバータ州南西部に位置する、カナディアンロッキーの東側斜面のハイキング道沿いに43台の自動撮影カメラを設置し、そこを通る野生動物たちを撮影した。大型捕食動物としては、オオカミ、アメリカグマ、ハイイログマ(グリズリー)、ピューマなどが、捕食される側の大型草食動物としては、ムース、ヘラジカ、白尾ジカ、ミュールジカなどが撮影された。そして、それらの写真には同時に、ハイキング道を通る多くの人間の姿も写っていた。

研究チームは、これらの野生動物たちと人間が同時に写っている頻度を統計解析し、そこに面白い傾向を見出した。大型捕食動物が人間と同時に写っている頻度は、大型草食動物が人間と同時に写っている頻度より有意に低く、人通りの多い場所ほど、両者が出会う確率は低かったのだ。厳密に言えば、一日当たり33人以上の人が通る場所では、草食動物は捕食動物の3倍も多く目撃され、一日当たり19人以上の人しか通らない場所でも、捕食動物が目撃されることは、依然として少なかったという。

これらの結果は、人間の存在が、草食動物よりも捕食動物をそのエリアから遠ざけている可能性を示唆しており、人間を恐れない草食動物に有利に働いていると考えられる。このことから、研究チームは、野生の食物連鎖に影響を与えないためには、ハイカーの数を一日18人以下に抑える必要があると提案している。この成果は、3月2日付けでオンラインジャーナル『ProS ONE』に掲載された(購読無料)。

(神無 久:サイエンスあれこれ

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