木はかく語りき、過去の出来事は木を見ればわかる

lumber

年輪年代学という学問をご存知だろうか?年輪のパターンは、同じ地域に生育した同じ種類の樹木であれば、樹齢による影響(若いときは成長が早い)を補正すると、その地域の環境変動のみを反映する。すると、若い樹木から老齢の樹木へと遡ることによって、年代と年輪パターンの相関をグラフ化できる。これが、標準年輪曲線というものだ。年輪は、切り出され、木材として使用された樹木からも測定できるため、標準年輪曲線は、さらに過去へと遡ることができる。実際、例えばドイツ南部地方のバーオークに関しては、約1万年前までの完全な標準年輪曲線が得られているという。この標準年輪曲線を使えば、新しく遺跡などから発掘された木材の年輪パターンから、その木材が切り出された年代を年単位で正確に決定できる。

今回、科学雑誌『Science』の1月13日付けオンライン速報版に掲載された論文によると、スイス連邦森林降雪研究所Ulf Büntgen氏率いる共同研究チームは、この標準年輪曲線と気温、降雨量など実際の環境変動を対応させることによって、ドイツ、フランス周辺の過去2500年前まで遡った気候を再現することに成功したという。そして、歴史学者や考古学者をも含む共同研究チームは、この過去の気候の記録によって、実際に起こった歴史上のできごとが見事に説明できることを発見したのだ。

例えば、安定と繁栄を誇った紀元前後200-300年のローマ帝国時代は、暖かく、降雨にも恵まれた、農業に最適の時代だったことがわかった。同様の天候は、西暦1000年から1200年の中世ヨーロッパが最高に繁栄した時代とも一致した。一方、西暦3世紀前後の、ゲルマン民族の大移動やローマ帝国の滅亡などの時代には、長期に渡る干ばつがあったことや、西暦1300年前後の飢饉や疫病で1347年までの間に約半数のヨーロッパ人の命が奪われた時代は、寒くて雨の多い夏が続いていたことなどが、今回の記録により明らかとなった。

それだけではない。今回の研究は、さらに興味深い事実を我々に語ってくれた。人間社会が繁栄して、多くの建造物が建てられる時代には、多くの樹木が切り出され、建築材料として使われる。従って、これらの時代に切り出された木材サンプルは、とても多い。一方で、西暦300年から600年にかけての、ヨーロッパ暗黒の時代に切り出された木材サンプルは、ほとんど皆無だという。現存する木は、まさに時代の生き証人なのだ。

(神無 久:サイエンスあれこれ

Creative Commons License photo credit: Amehare
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