ビフィズス菌が生産する酢酸が感染防止機能を持つ-理研

Influenza porcina en México

理化学研究所、東京大学、横浜市立大学などの研究チームは昨日27日付けの「Nature」誌に腸内菌の善玉菌のビフィズス菌に病原性大腸菌の感染を予防する仕組みをマウスを用いた実験を通して解き明かした研究結果が掲載された。

人の腸内には病気の原因となる悪玉菌や健康維持に必要な善玉菌など様々な腸内常在細菌が大量に存在している。この常在細菌のうち善玉菌の勢力が悪玉菌の活動を抑える働きがあることが分かっていた。ビフィズス菌が酢酸を生成して大腸粘膜の細胞を保護し、毒素の侵入を防ぐためだという。

この研究に関して、研究者からの意見が寄せられている。

この論文の共著者でもあるデイビッド・トッピング博士は以下のように研究の内容を説明し、未来への期待をのぞかせる。

「(かつて長いあいだ、悪いものと考えられていた)腸内細菌は近年、非常に健康に有益であるとの理解が、急速に広まっています。これらの有益な細菌(プロバイオティクス)は、食物繊維に含まれる炭水化物の代謝産物を介して、さまざまな効果を発揮しています。これらの代謝産物は短鎖脂肪酸(SCFA)と呼ばれます。この研究はこうした代謝産物のひとつである酸、「酢酸」が、からだをどのようにして高病原性大腸菌O157から守っているのかを調べたものです。

O157は、食品媒介感染症の主だった脅威です。この研究は、プロバイオティクスのビフィズス菌は感染から守る仕組みを明らかにしたとともに、私たちCSIRO予防健康フラッグシップで開発中の技術が非常に効果的であることも分かりました。この製品は加工したデンプンで、特殊なSCFAを大腸へ送り届ける作用を持っています。実験のデータも、酢酸が感染した動物の生存にとって重要であることを証明しました。この研究の結果は、感染制御を支援するために、より効果的なプレバイオティクス(大腸など消化管にもともといる有用菌を増殖させたり、有害な細菌の増殖を抑制することで、有益な効果をもたらす食品成分。)とプロバイオティクス食品の開発をもたらすと期待しています。

この研究プロジェクトは、基礎研究からその応用までを含む刺激的なものでした。この分野でCSIROは何年も前から日本の科学者と共同研究を続けてきましたが、理研のチームと研究したのは今回が初めてです。プロジェクトの成功は今後の新たな共同研究の端緒となると思います 」

また、東京農業大学の佐藤 英一准教授は次のように、この防御メカニズムの解明が画期的だと評価する一方で、やはりマウスと人間では腸内環境が違うと指摘。今後はヒトの腸内での場合のメカニズム解明を期待している。

「ビフィズス菌は、乳酸菌と並んでプロバイオティクスとしての保健効果が有望視されている菌種です。(ただし、乳酸以外にも酢酸やギ酸を多量に生成することから、微生物学的には乳酸菌とは異なります)今回の研究は、ビフィズス菌のなかのある菌種が作り出す酢酸が、腸管出血性大腸菌O157:H7の感染を防御するというものです。これまでもプロバイオティクスの生成する代謝産物が、感染症予防に関わっていることを示した研究例はあります。しかし、今回はメタゲノム解析やオミックス解析といった最先端の技術を使って、その防御メカニズムを解明した点で画期的だといえます。

一方で、無菌マウスや培養細胞を使用した実験であることにも注意しなければなりません。もちろん無菌マウスや培養細胞は、こういった実験には一般的に使われますし、これらなしでは解析は不可能といっても過言ではありません。

しかし、動物としてのヒトを考えた場合、ヒト腸内には1、000種類もの微生物が生息して腸内ビオータ(細菌叢)を形成しているといわれ、さらにマウスの腸内ビオータとも大きく異なります。

したがって、無菌マウスや培養細胞を使った実験で得られた今回の結果を、そっくりそのままヒトに適応することは困難です。多くの研究者がこのジレンマと格闘しているわけですが、ビフィズス菌はヒトの健康に大きく貢献するプロバイオティクスの代表菌種ですから、今後は実際のヒト腸内での感染症防御メカニズムが明らかにされることを期待したいと思います」

また、北海道大学の横田 篤教授は、今回の結果がビフィズス菌が炭水化物を発行して生産する酢酸が健康維持に役立つ物だということが示されたが、この報告から腸内の酢酸濃度を高くするためにお酢を飲めばいいということにはならないとコメントしている。また、大切なのは自分たちと共存しているビフィズス菌を含む腸内細菌叢を健全に保つために、バランスをとれた食生活を送ることだとまとめている。

image:理研
Creative Commons License photo credit: sarihuella
コメント引用:
・一般社団法人サイエンス・メディア・センター ・(社)SMC
・(社)サイエンス・メディア・センター ・SMC-Japan.org
■関連リンク
脳内マリファナで鎮痛効果-カリフォルニア大学 | スゴモリ
新しいDNA解析によって髪色が明らかに | スゴモリ
ビフィズス菌の作る酢酸がO157感染を抑止することを発見|2011年 プレスリリース|理化学研究所
「ビフィズス菌の感染防御機能」論文への専門家コメントScience Media Centre of Japan | Science Media Centre of Japan
Bifidobacteria can protect from enteropathogenic infection through production of acetate : Nature : Nature Publishing Group

Bookmark and Share

関連プロダクトクラウド