【書評】大切なことはみんなRPGから教わった
市村よしなりさんの『人生で大切なことはみんなRPGから教わった』は、「成功者は成功するまで諦めないから成功したんだ」と、書店に所狭しと並ぶ成功者が書いたビジネス書とほぼ同じ文句が並ぶサラリーマンのための啓蒙書だ。しかし、切り口を「RPG」に重ね合わせたところが新鮮だ。
人間(=社会人)は、「クリエイター」「プレイヤー」「キャラクター」の3つに分類されると説く。クリエイターは創造主=神=経営者のことを指す。プレイヤーは神の作った器の中でキャラクターを動かす役割=マネージャを与えられている。そして、キャラクターはプレイヤーの指示を待たなければ自ら動けない平社員を指している。
そして、社会生活を3つのRPGになぞらえる。マップが大きいものから「消費生活RPG」「企業RPG」「部署RPG」だ。消費生活RPGは企業RPGと部署RPGを内包し、企業RPGは部署RPGを内包している。人間は3つのRPGに所属しなければ、社会生活を営めない。そしてRPG内でのレベルアップは、ゲームと全く同じで、継続性や粘り強さが大切と説く。そして、ゲームと同様、RPGの変更は可能だ。
市村さんは、魔法使い、僧侶、吟遊詩人らと共に勇者=主人公になって、自分の世界を仲間と一緒に作ろうよと読者をいざなう。最後に、何度も書き換え可能な自分だけの「冒険の書」を持つことを勧められる。ドラクエやFFなどのRPGをプレイしたことのある人ならば、攻略本と同じような楽しい読書体験を得ることができる1冊だ。
著者独自の視点が感じられたのは、「資本主義はもうダメじゃないか」と自らの経営感覚から語っていることだ。「無」が「有」を生む金融資本主義は崩壊し、消費生活RPGから別のRPGに社会が大きく変化する可能性を示唆している。消費生活RPGの創造主は、別の誰かに取って変わられ、全く別の価値観が支配する広大なマップができる日が来るのも案外遠いことじゃないかもしれない。
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